基本的にトラリピ系FX自動売買は、値動きがなければ利益が得られません。
だったらいっそ、両建てして相場が上昇・下落どちらに転じても利益が出るように設定したらどうでしょうか?
本記事では上記の疑問を解消すべく、トラリピにおける両建ての有効性について、バックテストを踏まえて解説していきます。
本記事の結論:トラリピで両建てはNG
最初に結論から申し上げると、トラリピでの両建ては推奨できません。
その最大の理由は以下の通りです。
- 運用パフォーマンス:ハーフ&ハーフ>両建て
これは一体どういうことなのか。
詳細は後述するとして、まずは以下のグラフを見ていただけると理由が視覚的に伝わると思います。
- 累計利益:470万円:238万円
- 平均年利:7.6%:12.4%
- 最大含み損:-561万円:-146万円
- 最大必要資金:684万円:213万円
グラフを見ると、最大必要資金に対する累計利益は、明らかにハーフ&ハーフで運用した方がパフォーマンスが良いことがわかります。
※ハーフ&ハーフの詳細は以下の記事参照
では、いったいなぜこのような結果になるのか。
以下よりメリット・デメリットも交えながら、両建ての本質と仕組みについて解説していきます。
トラリピ 両建てとは
両建てとは、一般的に以下のように定義されています。
- 同じ通貨ペアにおいて、売りと買いのポジションを保有すること
相場において、買い注文は上昇する・売り注文は下落することによって利益を得ることができます。
つまり両建てすれば、買い・売りのポジションを同時に持つことになり、相場がどちらに転じても利益を得ることができるわけです。
この両建ての特性が、トラリピと相性良くマッチするのかが本記事の主題になります。
トラリピ 両建てのメリット
両建てのメリットは、以下に集約されます。
- 相場がどちらに転じても利益を取れる
- 含み損を固定できる
各メリットについて、それぞれ順に解説していきます。
両建てメリット1:どちらに転じても利益が取れる
上述した通り、両建ては買い・売りの両ポジション保有するので、相場が動けば必ず含み益になるポジションがあるはずです。
- 買いポジション:安く買って→高く売れば利益
- 売りポジション:高く売って→安く買い戻せば利益
そこで実際に両建てしたとして、含み益を一定額ごとに利確するトラリピにどれほどの恩恵があるのか。
今回は長期的に安定したレンジ相場を形成しているCAD/JPYを軸に、両建て運用のバックテストを行いました。
※バックテスト条件については以下の記事参照
上図チャートの最安値〜最高値まで、買いトラリピ・売りトラリピを同時に注文します。
バックテストの結果は以下の通り。
- 累計利益:4680000円
- 平均年利:7.6%
- 最大含み損:-5609500円
- 最大必要資金:6841232円
言わずもがなですが、利確回数に比例するため累計利益は右肩上がりです。
しかし含み損を常に抱えている状態なので、実現損益(累計利益+含み損益)の伸びは良くありません。
両建てメリット2:含み損を固定できる
マネースクエアは、証拠金に対して両建てMAX方式を採用しています。
- 証拠金は売り注文と買い注文を比較し、証拠金額が多いほうのみを必要証拠金とする方式
これによって、既存の注文と反対の注文を出すことで含み損を相殺(固定)することができます。
具体的には以下のイメージです。
①で掴んだ買ポジションが、②まで下落した瞬間、売ポジションを同量注文した例です。
最終的に③まで下落したとすると、②以降で下落した分の含み損は買・売が相殺しあって増えることはありません。
②で注文した売ポジションのおかげで、①で掴んだ買ポジションの含み損は、②と③それぞれのレート帯において同値です。
トラリピ 両建てのデメリット
両建てのデメリットは、以下に集約されます。
- マイナススワップによる影響
- 常に含み損を抱える
両建てデメリット1:マイナススワップによる影響
トラリピに限らず、FX自動売買は基本的にスワップポイントが低く設定されています。
両建てした場合は、いずれの通貨もマイナス収支になるため、日々スワップポイントを削られることになるので精神衛生上良くありません。
両建てデメリット2:常に含み損を抱える
両建ての最大のデメリットが、常に含み損を抱えるということです。
冒頭のグラフを再掲します。
- 累計利益:470万円:248万円
- 平均年利:7.6%:12.4%
- 最大含み損:-561万円:-146万円
- 最大必要資金:684万円:213万円
両建てすることで、確かに累計利益は2倍に伸びますが、最大含み損は3倍以上に膨れます。
含み損を常に抱える運用は、出口がない上に、運用パフォーマンス(年利)を著しく低下させてしまいます。
トラリピ 両建ては推奨しない理由
ここまで両建てのメリット・デメリットについて解説しました。
ここから改めて冒頭で述べた結論↓
- 運用パフォーマンス:ハーフ&ハーフ>両建て
この結論に回帰して、順を追いながら上記理由を深掘りしていきます。
両建てとハーフ&ハーフの証拠金の差
ハーフ&ハーフの定義は以下の通り。
- 設定レンジを半分に分け「上半分」を売り、「下半分」を買いのトラップを仕掛ける運用手法
ハーフ&ハーフは指値トラップを以下のイメージのように仕掛けます。
また両建ては、以下のハーフ&ハーフを2つ並べたものと考えることができます。
これらの想定から、証拠金について以下の式が成り立ちます。
- 証拠金(設定A+B) ×2 = 証拠金(設定C+D)
要するに、通常のハーフ&ハーフの証拠金は両建ての半分で足りるということです。
両建ての累計利益に優位性はない
両建ては上がっても下がっても利益が取れるから、最終的な累計利益はハーフ&ハーフに勝るのでは?
例えば上図のような両建てをした時、利益の取り方は次のようなイメージになります。
まさに上がっても、下がっても利益(pips)が取れているわけですが、レンジの上端・下端に到達すれば含み損が大きくなるポジションもあるわけです。
一方、先ほどの設定(C+D)に要する証拠金と同じ額で、設定Aのハーフ&ハーフを2セット注文することが可能です。
その場合、利益の取り方は次のようなイメージになります。
このように設定すれば、両建ての時と同じ利益(pips)を取れて、なおかつ含み損の振れ幅は小さくなります。
上記考えをもとに、両建てとハーフ&ハーフ×2を比較したグラフが以下になります。
- 累計利益:470万円:476万円
- 平均年利:7.6%:12.4%
- 最大含み損:-561万円:-292万円
- 最大必要資金:684万円:425万円
累計利益にはほとんど差がなく、必要証拠金も同じとなれば、両建てのメリットで説明した2点を完全に喰っているというわけです。
つまりハーフ&ハーフという完全上位互換が存在する以上、トラリピにおいて両建てをするメリットは少ないと言えます。
まとめ:トラリピで両建ては非推奨
さて、ここまでトラリピで『両建て』をおすすめしない理由について解説してきました。
- 運用パフォーマンス:ハーフ&ハーフ>両建て
両建てはハーフ&ハーフに比べ、含み損が大きい分パフォーマンスが悪いので推奨できません。
同じ証拠金を運用するのであれば、ハーフ&ハーフで運用する方が圧倒的にパフォーマンスが良いという結果を示せたかと思います。
とはいえ、インヴァスト証券が提供する『トライオートFX』のコアレンジャーのように、、、
レンジの中央部分だけの両建ては有用かもしれません。
現在レートがより密集している部分に仕掛けるトラップが増えるわけなので、累計利益は伸びてかつ、含み損はそこまで抱えそうにないので。
今後バックテストでの検証を重ね次第、記事にしていきますので参考にしていただけたら幸いです。