

トラリピを運用していて何か物足りない時、それは全く決済通知が来ないとき。
そんな時は決済チャンスを増やすために、他の通貨に手を出したくなるのではないでしょうか。

- リスクヘッジ出来そう
- 利確回数が増えそう
- パフォーマンスが上がりそう
本記事ではそのような悩みを解決すべく、トラリピで複数通貨を取り扱うメリット・デメリットについて、具体的な数値例を用いて解説していきます。
トラリピで複数通貨の運用(対円)
複数通貨運用で安定した利益を狙う
トラリピで複数の通貨ペアを運用することで、利確回数が増えるのは間違いありません。

ただ上図のチャートを見て分かる通り、対円通貨の動きはほぼ連動しています。
そのため、どの通貨ペアも下落相場において買いトラリピは利確されず、逆もまた然り。

通貨ペア同士が連動した動きである以上、含み損を抱えるタイミングも同じであるため、リスクヘッジとは言い切れません。
そこで思いついたのが以下の仮説。

通貨ペアの連動した動きを利用して両建てすれば、上昇・下落どちらに転じても安定して利益が出せるのでは?
イメージとしては異通貨同士をハーフ&ハーフを組み合わせる感じになります。

これなら含み損を抱えるタイミングも分散され、いつでも安定した利益を狙えそうです。
- 異通貨ペアを両建てすれば、安定した利益が狙えるか
異通貨両建てシミュレーション
上記の仮説を検証するために、過去データ10年分を用いてシミュレーションを進めていきます。
通貨ペアは、1通貨あたりのレート帯が近いCAD/JPYとAUD/JPYを選定しました。
仕掛けるハーフ&ハーフは以下のイメージ。


上図のようにハーフ&ハーフを組めば、どちらかの通貨ペアでは必ず利益が取れるはず。
トラリピの設定および運用期間については以下の通り。
- 運用期間:過去10年間(2010〜2019)
- トラップ範囲:最安値と最高値をカバーしてハーフ&ハーフ
- 指値値幅:0.10円(対円) 0.0010ドル(対ドル)
- 通貨量:1000通貨
シンプルな設定です。
結果については以下の通りとなりました。

- 累計利益:4868000円
- 平均年利:9.3%
- 最大含み損:-4772550円
- 最大必要資金:5830876円
累計利益は大きいですが、両建てのため常に含み損が大きいため、実現損益の伸びは良くありません。
以前記事にした単一通貨のパフォーマンスよりも悪い結果になっているのに驚きです。

そんなことはありません。
ここまでは対円通貨を組み合わせることを前提に議論を進めてきました。
実はトラリピの複数通貨運用の本領は、対円×対ドル通貨を組み合わせることで発揮されます。
- 対円通貨の複数運用はリスクヘッジにならず
- 異通貨両建てのパフォーマンスは悪い
トラリピの複数通貨運用:メリット
トラリピの複数通貨運用のメリットは、対円×対ドル通貨を組み合わせることで感じることができます。
以下、順番にまとめていきます。
含み損が分散される
トラリピ複数通貨運用における最大のメリットはこれに尽きます。
前節で説明した通り、対円通貨ペア同士は連動した動きになるので、含み損を抱えこむ時期はほぼ同じです。

しかし対ドル通貨ペア、例えばNZD/USDなどを運用に絡めると以下のようになります。

上図のように含み損を抱えるタイミングが分散されているため、
- 決済チャンスが増える
- リスクヘッジができる
- 必要運用資金を抑えることができる
ということになります。
では実際、どれくらいの効果があるのか?
過去データのシミュレーション結果から、具体的な数値を見ていきましょう。
シミュレーションの条件は先程と同様です。
- 運用期間:過去10年間(2010〜2019)
- トラップ範囲:最安値と最高値をカバーしてハーフ&ハーフ
- 指値値幅:0.10円(対円) 0.0010ドル(対ドル)
- 通貨量:1000通貨
グラフ1(AUD/JPY + CAD/JPY)の結果については以下の通りとなりました。

- 累計利益:5023000円
- 平均年利:15.9%
- 最大含み損:-2484090円
- 最大必要資金:3500042円
やはり対円通貨ペア同士になるので、円高が進むと含み損によるダメージは大きいです。
グラフ2(NZD/USD + CAD/JPY)の結果については以下の通りとなりました。

- 累計利益:4234380円
- 平均年利:21.0%
- 最大含み損:-1480142円
- 最大必要資金:2240366円
グラフ1の運用結果と比べ、含み損のダメージが大幅に軽減され、それに伴い平均年利も上昇しています。
以上の結果より、複数通貨ペア運用の恩恵は明らかです。
複数通貨で組める『すくみ』とは
『すくみ』は複数の通貨を組み合わせて、通貨同士を補完することで、リスクを分散させる考え方です。
例えば以下の通貨ペア同士で『すくみ』を組むことを考えてみます。
- USD/JPY…買い
- EUR/USD…買い
- EUR/JPY…売り
これらの通貨ペアを運用している時、相場が円高に傾いたらどうなるでしょうか?

図を見てわかる通り、通貨ペアそれぞれのポジションで利益・損失・変化なしが共存していることがわかります。
つまり複数通貨を組み合わせることで、含み損益を相殺させ、レンジ相場内の値動きを利確し続ける(後述)という仕組みです。
- トラリピで『すくみ』を組める
トラリピを安定させる
先ほど紹介した『すくみ』を円高だけのみならず、他の状況においても考えてみます。

複数通貨で運用して入れば、いずれの通貨高・通貨安が起きても、『○』『×』『ー』が混在し、為替損益を相殺し合います。
含み損を抱えたポジションは相場が回復するまで、気長に待ち続け、利益が出ているポジションは確実に利確するため、トラリピの収益も安定するというわけです。
トラリピの複数通貨運用:デメリット
口座内の資金管理が難しい
口座内の資金を複数の通貨で分散させるため、資金管理が難しくなります。
単一通貨ペアであれば、考慮すべきロスカットラインは明白で、『トラリピ運用資産表』を使えば簡単に割り出すこと出来ます。
一方で複数通貨ペアを運用しているのであれば、それぞれの通貨ペアのロスカットラインは、他の通貨の状況によって異なるため、把握することが難しいです。

例えばA通貨とB通貨2の通貨で運用する場合、A通貨のロスカットラインはB通貨の相場状況によって異なります。
つまりロスカットラインが動的であるため、頼りになる数値は証拠金維持率しかありません。
想定外の値動きに弱い
今までは『有事の円買い』で、世界経済に懸念材料があれば円が買われやすくなるのが相場の常識でした。
しかしこの状況が永続的に考えるのは些か楽観的で、例えば少し前まで、有事に買われる安全資産は円ではなくドルでした。
では、ドル・円が同時に通貨高になった時、さきほどの『すくみ』はどうなるでしょうか?

その場合、含み益ポジションが生まれないので、含み損を相殺するすることができず損失が増えるばかりです。
このように運用状況によっては、相場の常識から外れた想定外の相場では痛手を被ることもあります。
複数通貨で安定収入を得られるか?
安定した収入源になるか
複数通貨での運用は、極論を言えば異通貨で変則的な両建てをしているに過ぎません。
これによって、一方的な下落トレンドが来ても安定して利益を生み出すためです。

例を挙げるなら、米中貿易戦争を懸念した世界経済は一歩的な円高相場を生み出し、これによってトラリピの買いポジションは、ほとんど決済されず含み損を抱えたままでした。

しかし、これをカバーできる他通貨の売りトラリピを仕込んでおけば、相場がどちらに転じても利益を挙げることができました。
含み損が抱えたままの運用
この手法においては常時含み損を抱えることになります。
しかし、下図のように長い時間をかけて運用することで、値動きを少しずつ利確し続ければ、いつかは元本以上の利益が積み重なると考えています。

利益が元本以上に積み重なれば、含み損をどれだけ抱えていても、マイナス収支にはなり得ません。
トラリピの複数通貨運用:まとめ

- 相場状況に関係なく利確できる
- 含み損益の相殺
- 想定外の相場に弱い
相場が上昇・下落どちらに転じても利確できるのは大きな強みであり、何より運用していて楽しいはずです。
また常に含み損を抱えることになりますが、これはトラリピ系FX自動売買の定めです。
下落中は通常大きくなる含み損も、複数通貨で運用することで相殺されやすく、長い時間を掛けることで最終的に含み損以上の利益をもたらすと予想できるので、複数通貨の運用にも挑戦してはいかがでしょうか?